小林製薬のネーミングと『命の母』
小林製薬の商品名は、わかりやすいが、ダサい。
『トイレその後に』『あせワキパッド』。
『メガネクリーナふきふき』(『スマートフォンふきふき』もある)。
水虫薬の『タムチンキ』、膀胱炎薬の『ボーコレン』。
『ケシミンクリーム』にいたっては、シミを「予防」する効果は謳われているが、シミを「消す」効果はないので、ほとんど詐欺である。
「生理前のイライラ」に効くと宣伝されている『命の母ホワイト』。
「ホルモンに翻弄される女性像」を強化している。
くどいが、女性がみな月経前にイライラするわけではなく、イライラしたとしても、それが対人関係や仕事に影響するような例は、ごくごく稀だろう。
ちなみに、小林製薬には、イライラに効くという『イララック』という薬もある。
『命の母』という商品名は、戦前の同名の「婦人病(=子宮病=生殖器病)」治療薬から採ったと思われる。
「婦人病」は、結婚の障害、離婚の原因になるとされ、女性たちから恐れられていた。
とくに、「おりもの」の異状を指す「こしけ(白帯下)」は、「怨霊の崇り」「恐ろしい子宮病」と言われ、『命の母』をはじめとする治療薬の宣伝が多数、婦人雑誌に掲載されていた。
以下引用> 夫にまで愛想を尽かされるイヤな『こしけ』は女の活血(いきち)を枯らす怨霊の崇り――(中略)こしけの下りる時に限って頭痛、めまい、腰足冷え、下腹張り、内股がしびれたり、月経不順、不眠症、根気うすくなるもので、人生無二の快楽なく、また局部とはまるで関係のない頭の毛が抜け、日増しに薄くなるものです。(1916年『女学世界』に掲載された広告)
以下引用> 婦人の命を削る恐ろしい子宮病こしけ(中略)こしけの下る婦人は既に恐ろしい子宮病に罹っている証拠ですから、一日も早く治さぬと生まれもつかぬ病身となります。(中略)少しでもこしけある方は勿論、逆上(のぼせ)、頭痛、足腰冷えて困る人も、直に二銭切手封入、お手紙ください。(1916年『婦人世界』に掲載された広告)
こうした、こしけ治療薬の宣伝文を読み、生理的な「おりもの」についても、病気を疑い、思い悩んだ女性がいたかもしれない。
健康不安をあおり、高い薬を買わせるという商法は、いつの時代にもある。
小林製薬のHPで、『命の母』の「効能・効果」を見ると、「こしけ」もあれば、「血の道症」「ヒステリー」まである。
(「ヒステリー」については、当ブログ「※あくまで個人の感想です」でも触れています)
どこまでも時代錯誤な薬である。