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その11:メダルの数より大切なこと

 本稿ではまず、「女人禁制」だったオリンピックの出場権を、女性たちが勝ち取った歴史について触れた。それから約百年。二〇一四年に国際オリンピック委員会(IOC)は「オリンピック・アジェンダ2020」を採択し、「女性の参加率五〇%の実現」と「男女混合の団体種目の採用の奨励」を目標に掲げた。

 来年に迫った東京大会では、女性の参加率は四八・八%(別枠扱いの追加五競技を除く)とほぼ半数となる見込みで、柔道混合団体や卓球混合ダブルスなどが新たに採用されるなど、形式的には男女平等化が実現されつつある。

 さらに、スポーツ界全体におけるダイバーシティの推進に期待したい。また、東京大会において「性のカテゴリー」がどのように解釈され、取り扱われるかについても注目したいところである。

 本稿では、女性アスリートたちが容赦なく好奇の視線や性的視線にさらされてきたことについても言及した。真摯に競技に取り組むアスリートたちを揶揄(やゆ)したり性的な対象と見なしたりする社会は、成熟した社会とはいえない。日本は東京大会の開催国として、成長することができるのだろうか。

 そして「その10」では、生理用品の進化によって、女性アスリートが経血処置にわずらわされることがなくなったと書いたが、月経痛や月経前症候群に悩まされているアスリートは数多くいる。

 これらの症状は、適切な鎮痛薬や低用量ピルの服用などで改善することが可能であるため、婦人科系にも詳しいスポーツドクターや専門のアドバイザーの普及が望まれる。

 特に日本では、ピルは「避妊薬」であるという認識が根強いため、スポーツの世界のみならず、正しい情報を発信していくことが重要であろう。

 ハードトレーニングによる無月経や、その結果引き起こされる骨粗鬆症(こつそしょうしょう)も深刻な問題である。目先の成績よりも、アスリートの一生を視野に入れた健康管理が当たり前となってほしい。

 東京大会では、メダルの数よりもアスリートたちを取り巻く環境の改善、進化に期待したい。

女性アスリート その1~その11 引用・参考文献一覧

清水諭編『オリンピック・スタディーズ 複数の経験・複数の政治』せりか書房
小原敏彦『KINUEは走る 忘れられた孤独のメダリスト』健康ジャーナル社
人見絹枝『最新女子陸上競技』文展堂書店
人見絹枝『スパイクの跡』平凡社
人見絹枝『戦ふまで』三省堂
人見絹枝『ゴールに入る』一成社
人見絹枝『女子スポーツを語る』人文書房
田尾栄一『花絆』第三号
織田幹雄・戸田純編『炎のスプリンター 人見絹枝自伝』山陽新聞社出版局
永島惇正編『人見絹枝 生誕百年記念誌』日本女子体育大学
野口源三郎「初めて日章旗を掲げせしめた陸上競技および水泳競技の経過」『アサヒ・スポーツ 第九回国際オリンピック競技特別号』第六巻第二十号
二階堂清寿ほか『二階堂トクヨ伝』不昧堂書店
木下秀明『スポーツの近代日本史』杏林書院
日本オリンピック委員会編『近代オリンピック一〇〇年の歩み』ベースボール・マガジン社

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