使い捨てナプキンの元祖「アンネナプキン」が発売されたのは、一九六一年のことである。それ以前、女性たちは経血処置に脱脂綿を使っていた。動くとずれたり転がり落ちたりすることもあった脱脂綿に比べると、ナプキンは頼りがいがあったが、発売当初のナプキンは厚みがあった。それは、体育の時間にブルマーをはかねばならなかった女子生徒たちにとって悩みの種だった。
その後、複数のメーカーからさまざまなサイズのナプキンが発売されるようになり、一九七〇年代後半に、吸収体に高吸収性ポリマーが使用されるようになると、薄型化も一気に進んだ。レオタード姿でさえナプキンをつけていることが悟られなくなった現在、ブルマー自体も過去のものとなった。
経血漏れやスタイルを気にせずにすむ生理用品の登場が、女性のスポーツへの参加を促したことは言うまでもない。特に集中力が不可欠なアスリートにとって、ナプキンの登場、そして高性能化は福音だった。
アスリートにおいては、タンポンの使用率も高かったと思われる。一九六四年に、エーザイが東京オリンピックに合わせて「セロポン」というタンポンを発売したのも、タンポンがスポーツに適していることをアピールしたかったからであろう。
ちなみに、「セロポン」は付属のスティックでタンポンを挿入する「スティック式タンポン」だった。結局、タンポンはあまり普及することなく、ナプキンの性能向上と反比例するかのように衰退の一途をたどり、現在の販売は一社のみである。
今日では、タンポンよりも長時間の挿入が可能な月経カップを使用するアスリートや、低用量ピルで月経自体をコントロールするアスリートも増えてきている。もはや、経血処置はアスリートにとって足枷(あしかせ)ではなくなった。