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「月経カップ」使用体験談

拙著『生理用品の社会史』で触れながら、自分自身は使ったことがなく、詳しく言及することができなかった「月経カップ」。長年、愛用されているMさんから貴重な体験談をご提供いただいたので、ここに掲載します。
(使用感には個人差があろうことをお断りしておきます。)

月経カップ使用の経緯

私は20代前半くらいから10年ほどカップを使っています。
それまでは使い捨てナプキンと、日によってタンポンを使っていました。

カップを使い始めた当時、避妊+月経不順の調整のためにピルを飲み始めたところで、自分の性や体のことに向き合いたい気持ちが高まっており、布ナプキンやオーガニックタンポンなど色々探しているなかで月経カップを見つけました。ダメもとで買うには高価だったので悩みましたが思い切って購入しました。

しかし購入したものには欠点(失敗例のところで後述します。仕様上の欠陥なのか、単なる不良品の個体だったのか不明)があり、使いづらかったため、その後、初代とは違う商品(ムーンカップというもの)を新たに購入し、今はそちらを快適に使っています。

月経カップの基本的な使用法

シリコン(あるいはゴム)のカップを指で、縦に四つ折りするような感じで潰し、膣になるべく奥の方まで入れます。手を離すと元のカップの形に戻り膣内がカップでいっぱいになるため、そこに経血を受け止めることになります。

カップが開いたあとで位置を調整して完了です。

失敗例(1):カップが元の形に開いていない場合

これは前述の私が購入した不良品?のケースなのですが。
カップは通常、上の方に4箇所ほど、針であけたくらいの穴が開いていますので、折りたたんで例えば掌などに、つぶれた状態のカップのくちをあてて手を離すと、その穴から空気が入って掌に吸い付きながらカップが元の形に戻ります。

私が1個目に購入したものは不良品なのか商品の仕様なのかわかりませんが、穴はあるのにその穴から空気が入らない=元のかたちに戻らず潰れたまま掌に吸い付くものでした。

カップがうまく開いていないと、膣の壁とカップの間に隙間ができますのでそこから経血が洩れます。なのでカップを開いたまま膣内に無理矢理押し込んで使うことになります。これは入れる時に結構痛いです。

購入時は使用前にこの穴が機能しているかどうか、掌などで確認したほうが良いと思います。うちにある初代カップは針で穴を広げてみたりしたのですが、あまりうまく使えませんでした。

空気穴が機能している2代目カップにしてからは、うまく開かなかったという経験はありません。

失敗例(2):正しい場所に入っていない場合

タンポンも同じですが、奧のほうにちゃんと入っていないと歩いた時などに痛みや違和感が出ます。違和感がある場合は少し押し込むと解決する場合が多いです。
これは感覚的な問題なので個人で試行錯誤するしかないと思います。

カップのおしりについているしっぽ部分が膣口に当たって痛い場合は、切って少し短くしてしまうと解決します。使いながら調整すればよいと思います。
(完全に切り落としてしまうとカップを出すときに少し不便だと思います)

月経カップを取り出す

カップのおしりにしっぽ(?)がついているので、それを手がかりに引き、カップのおしりをつまみながら引きずり出す!という感覚です。

私はお風呂で出しているので汚しても洗えばいいや~と気楽に出していますが、トイレなどで出す場合は粘りのある経血が伸びたり垂れたりしますので、服などを汚さないよう気をつけたほうがよいです。

月経カップのサイズ

私はSサイズしか使ったことがありませんが参考までに。
四つ折りにつぶした状態で約3.5cm×2.5cm×(長さ5.5cm+しっぽ1.5cm・・・しっぽはカット済なので購入時はもう少し長かったです)。

もうちょっと強めに潰せばもう少し小さくなるかな、という感じです。

月経カップの洗浄

私は、石鹸でよく洗っているだけです。
月経と月経の間には小鍋で煮沸消毒もしますが、洗浄のメインは石鹸での手洗いという認識でいます。それで感染症などを起こしたことは(少なくとも私は)ありません。

月経カップの長所

びっくりするほど快適です。『生理用品の社会史』には、医師による指導がなされるようになったのと、アンネナプキンの登場が月経史における2つの転換点だと書かれておりましたが、私はこれを読んだとき、「私にとって3つめの転換点はカップを使ったときだ!」と思ったくらいです。

前述したとおり、1個目に買ったカップは不良品?で使う時に結構痛かったのですが、入ってしまえばこの上なく快適だったので、それでも数年は使っていました。そのくらい私にとっては画期的な生理用品でした。

まず、私はピルを使っていたので経血量がそんなに多くありませんでしたので、多い日でも朝入れたら夜お風呂で出すまで交換不要でした。

ピルをやめてかなり経ったので経血量が増え、多分今は普通くらいだと思いますが、一番多い日でも洩れたことはほとんどありません。心配であればナプキンと併用すれば良いかと思います。

ナプキン使用時のじわっと経血が出る感覚がないので、月経痛が軽い人であれば自分が月経中なのを忘れられると思います。

カップがちゃんと開いていれば、よれる・ずれる・落ちてくるというような経験も10年使っていて一度もありません。
また、まとめて経血を見るのは結構面白いので気に入っています(笑)

月経カップの短所

カップを入れなおす場所に困ります。
手を汚さないように着脱するのが難しいので、外で入れ直したい場合は困ります。個室の中に手洗いがあればいいのにな~と思います。

ヨーロッパではホテルや空港、大学などは個室の中に小さな手洗いやビデ用シャワー(日本式ウォシュレットではなく、洗面台から伸びるシャワーノズルのようなもの!)がついている場合もあり、手くらいなら汚しても洗えるので安心なのですけれどね・・・。

ただ、カップは着用可能時間が長めなので、私は外で入れ直したことはほとんどありません。経血の多い方で、外で働いている方は使い捨てのゴム手袋やウェットティッシュを持ち歩くなどの工夫が必要なのかもしれません。

入れる際、無痛ではありません。
ナプキンやタンポンよりは痛み・違和感はあります。4つ折りにしてもタンポンより大きいですし、膣にものを入れることに抵抗を感じる人には向いていないのかなと思います。
ただ、収まる場所に収まってしまえば痛み・違和感はありません。