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2011-11-14

NHK『使命と魂のリミット』後編

NHK土曜ドラマスペシャル『使命と魂のリミット』後編。

ここまであらすじを簡略化してしまうと身も蓋もないが、エンジニアの直井(速水もこみち)が、欠陥自動車のせいで命を落とした婚約者の復讐をするため、その自動車メーカーの社長(中尾彬)を殺害しようとする話。

特殊なのは、社長の心臓手術中に病院の電気系統を遠隔操作で破壊し、手術を妨害するという殺害手段である。

直井は、ほかの入院患者を巻き添えにしないため、あらかじめ病院に破壊(爆破)の予告をし、実際に小規模の爆発を起こす。

思惑通り、社長は高名な心臓外科医、西園(舘ひろし)の執刀を強く希望しているので病院に居続けるが、ほかの患者たちは次々と退院する。

しかし、退院しない患者もいるため、もともと「優しい人」である直井は、いざというとき(社長の手術が始まり、電気系統を破壊するとき)、迷いが生じる。

また、もともと「優しい人」なので、病院内の事情を探るために近づいた看護師(倉科カナ)に情が移り(?)、彼女の「こんな恐ろしいことは、もうやめて」という訴えに負けてしまう。

一見、準備周到に見えるのだが、社長を殺すことが目的なら、なぜこんなまどろっこしい計画を立てる必要があるのだろう。

直井は、下調べのために、夜間に病院に忍び込んでいるのだが、そのときに社長の個室に行って絞殺でもしたほうが、よほど簡単・確実なのである。

それよりなにより、憎い相手を手術中に「安楽死」させるだろうか?

直井はきっと、エンジニアとしての腕試しをしたかったのだ、と納得することにした。

一方、主人公の夕紀(石原さとみ)は、心臓手術中に亡くなった父親の執刀医だった西園に疑惑を抱き、医師を志したのだが、電気系統が破壊されつつも着々と手術を行う西園を間近に見て、「なぜ、あんなことを思ったのだろう。この人が父を殺したなんて」と感じ入る。

そして、手術が無事に終わったあと、自分の母親(高島礼子)との再婚を望む西園を自ら「2人目の父親」と呼ぶ。

ずいぶん素直な人である。

それにしても、『あぶない刑事』以来、変わらぬ演技力の舘ひろし。終盤の長台詞はキツかった。

難しい手術に携わる娘(石原)と恋人(舘)を涙ながらに見守る役を演じた高島礼子。

NHKドラマ10『ラストマネー 愛の値段』913日~1025日)で演じた、次々と男を虜にし、保険金目的で殺害する色気のある悪女役がはまりすぎていたので、どうしても悪い女に見えてしまう。

西園(舘)にも保険金をかけているのではないかと疑いたくなった。

(文中、敬称略)

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