パートナーシップ証明書
同性カップルに対し結婚に相当する関係を認め、「パートナーシップ証明書」を発行するという方針を東京都渋谷区が表明した。
性的マイノリティに対する差別を理不尽だと感じてきた私だが、この方針についての報道には些か不満なのだ。
2月15日の朝日新聞の社説は、「現実に、ともに暮らし、強い結びつきをもつ同性カップルは少なくないが、法律上の結婚はできない。男女間の結婚のように関係を証明したりする施策はなく、さまざまな不便や不合理を感じている。そんな人たちを支えようと、自治体でできることを模索し、新たな一歩を踏み出そうとする取り組みを評価したい」と諸手を挙げて賛成している。
私は、結婚制度に「乗れない(同性)カップル」同様、「乗りたくない(事実婚)カップル」にも「パートナーシップ証明書」が発行されるのかどうか?という点が気になったのだが、新聞やニュースはこれについて全く言及していない。
仕方なく渋谷区役所に問い合わせたところ、同性カップル限定とのこと。
結婚制度に「乗りたくない」だけなら「乗ればいい」のだろうが、「乗りたくない」のには理由がある。
とはいえ、役所の人を困らせるのが目的ではないので、それについては触れなかった。ちなみに朝日新聞掲載の世論調査では半数以上が渋谷区の方針に賛成しているが、「わざわざお電話くださる方は、ほとんどが反対の方です」とのことで、毎日全国から「お叱りの電話」がかかってくるらしい。
朝日新聞の社説には「諸外国では同性間の結婚を認める国が増えつつある。生殖医療を利用したり養子を受け入れたりして、子育てするカップルもいる。人権や多様な生き方を尊重する流れの一つだろう」とあるが、同性婚の認否以前に、国によって結婚制度やそれに伴う諸事情(例えば、夫婦別姓など)が異なる。
当然ながら「結婚しないと損をする国」ほど、婚姻率が高い。
真に「人権や多様な生き方を尊重する」社会を目指すなら、結婚制度の間口を広げるよりも、「結婚しなくても損をしない社会」にするべきなのだ。
でもそうはならない。国が最優先するのは子どもを増やすことであり、そのためには現行の結婚制度が有効だとされているから。
「生殖医療を利用したり養子を受け入れたりして、子育てするカップルもいる」というくだりには、同性カップルも子どもを増やすことに貢献しますよ、というニュアンスが感じられる。穿ちすぎだろうか。
数日前、NHKの夕方のニュース番組枠で、「ある結婚相談所」(「ノッツェ」の文字が思いっきり映っていたけど)が主催した婚活イベントを取り上げていた。
「育児」を通して相手を知り、よりよい結婚生活を目指すというコンセプトで、小さな子どもたちが集められ、参加者たちは育児の真似事をしていた。
出産、育児を前提として結婚相手を選ぶということになるが、それならば女性の参加者には年齢制限があるのだろうか。結婚したら必ず子どもが生まれるとは限らないのに。
結婚も出産も人生の選択肢の一つに過ぎないと考えるような人間は、この国では最早「非国民」なのだろう。