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2015-07-11

ETV特集『頑張るよりしょうがねえ』

天邪鬼なので、まわりが意味もなく(意味はあるんだろうが)盛り上がっていると、逆に白けてしまう。

だからオリンピック招致が決定したときのあの映像は、私を最大級にドン引きさせた。やがて区民体育館に2020年東京オリンピック」の横断幕がかかり、商店街に同様の幟が飾られ、街中がオリンピック歓迎ムードに?! これがあと5年も続くとは、苦痛だ。

6月13日に再放送されたETV特集『頑張るよりしょうがねえ――福島・南相馬 ある老夫婦の日々』

南相馬で暮らす80代後半の老夫婦は、東日本大震災の津波で家を流され、頼りにしていた58歳の息子も失った。

夫婦にはもう1人、息子がいたが、20歳で夭折していた。

妻は段差の多い借り上げ住宅で転倒して腰を傷め入院。元気だった頃は、日本舞踊の師範をしており、80人の弟子がいた。

夫は、妻の食事の介助をするため、朝、昼、晩と1日3回、軽トラを運転して病院へ通う。

退院後は、近所に新しくできる介護施設に妻を入れようと見学に。ホテル並みの設備を見て、「こういうところさ入れてえなあ」

しかし、施設は完成しても介護の人手が足りず、ベッドは空いているのに入所できない。

借り上げ住宅もあと1年で出て行かなければならないので、夫は人生最後の大仕事に乗り出す。コツコツと貯めた農協の積立金をすべて解約して土地を購入、家を新築することにしたのだ。

実は新築の最大の目的は、妻を元気づけることにあった。

息子を二度も失った妻は、うつ病も発症していた。毎日、息子の夢を見て涙を流す。

妻に生きる希望を与えようと、夫は自分で図面を引いた。妻のための完全バリアフリー住宅。歩行訓練ができる長い廊下と手摺り。料理が楽しくなるようなアイランド型のキッチン。

「あなた専用の介護のできる家を作るんだから、頑張れよ。家が完成しないうちは、あの世に行ってはダメだ。自分の家からあの世に行きましょう」

夫が自分のために頑張っている姿を見て、「死ぬよりほかない」が口癖だった妻が、「家を建てたら(息子の遺影を)飾ってみようかなと思って楽しみなの」と。

妻の退院後は、借り上げ住宅での老々介護。

夫も体が悪い。歩行用カートを使ってやっと歩いている状態。「俺が参ったら、どうしようもない」と整骨院に通いながら介護を続ける。

2014年4月に建築が始まった家は、9月に完成の予定だった。しかし、災害公営住宅や東京オリンピックに向けた建設ラッシュに人手を奪われ、工事が遅々として進まない。そして、妻は家の完成を待たず、震災から3年半後の9月11日に亡くなった。

「希望なんて何にもないよ。何のために家を作ったかわかんない。家なんてつくらないでお金持っていたほうがよっぽど皆に大事にされたべ」

オリンピックを招致したらこうなることはわかっていた。加えて国立競技場は大幅な予算オーバー。東京オリンピックっていったい……

 


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