映画『飛べ!ダコタ』
久しぶりに映画館へ出かけた。
最後に出かけたのは、1998年(前世紀!)上映の『アルマゲドン』なので、実に15年ぶり。
当時は、とくに観たい映画がなくても、暇つぶしに出かけていた。
『アルマゲドン』は、設定が深刻(地球滅亡の危機)なわりに展開が粗末すぎて、後半白けきっていたところ、隣で夫が滂沱の涙を流していることに気づき、ますます白けたのだった。
それと私は、映画館で(というよりどこにいても)他人のマナーが気になって仕方がないタイプ。
つまらない映画だと、「つまらない上に観客のマナーが悪い」と感じるし、面白い映画だと、「せっかくの面白い映画が台無し」と感じる。
1年くらい遅れても、自宅で観た方がマシ、と悟って15年が経過していた。
重い腰を上げて出かけた映画は、『飛べ!ダコタ』。
理由は、毎夏お世話になっている佐渡が舞台で、佐渡の多くの方々の協力によって作られた映画だから。
つまり、内容に期待したわけではなく、お付き合いのつもりだった。
しかし、いい意味で予想外の映画だった。
粗筋は、あらかじめ知っていた。
「ネタバレ注意」と断るまでもなく単純。
終戦直後、佐渡にイギリス機が不時着し、再び飛び立つまでの間、島民たちとイギリス人たちが心温まる交流をするという、実話に基づいた「いい話」。
しかも、ヒロインの比嘉愛未をはじめ、登場人物が全員、地味。とくに誰かがカッコよかったり、活躍したりするわけでもなく、淡々とエピソードが重ねられていく。
しかし、そこに一本貫かれているのが、きれいごとではない反戦思想。
終戦後半年足らずで、こんなに頭が民主化されているかな、と感じたセリフは多々あったが、そんなことは全然、気にならなくなってくる。
“イギリスの兵隊さんたちは、いい人だ。鬼畜米英だなんて、軍部に騙された”と話す女性(角替和枝)に、“軍部だけが悪いわけじゃない。私たちみんなが戦争を始めたんだ”と村長(柄本明)が諭すシーンなど、明らかに今日的理解が反映されている気がするが、これは、ボーッとしているとまた同じような時代が来るぞ、という警告に他ならない。
同じく飛行機をモチーフに戦争を描いている『風立ちぬ』に比べ、ほとんど周知されていない『飛べ!ダコタ』。
単館映画だが、予定よりも長く上映されるのではないだろうか。
今回あらためて、私は地味で真面目な作品、モノ、人が好きなんだなと思った。
地味だが不真面目な夫は、今回も滂沱の涙を流していた。