『リーガルハイ』と和歌山カレー事件
明日(12月18日)最終回を迎える『リーガルハイ』(フジテレビ)。
今クールのベースとなっている安藤貴和(小雪)の事件は、和歌山カレー事件をモチーフにしている(と思う)。
両事件とも、近隣住民の目撃証言と、事件に使われたとされる毒物が容疑者の自宅から見つかったという点が、有罪の根拠とされ、死刑判決が下されている。
(異なるのは、貴和は控訴審で犯行を認める発言をしたが、カレー事件の林眞須美は、一貫して無実を主張しているという点)。
前回の放送では、最高裁において、貴和の弁護を担当している古美門研介(堺雅人)が、警察と検察が証拠(青酸カリ)の確保に失敗したため、証拠を捏造したという新たな事実を主張し、形勢逆転を図った。
和歌山カレー事件では、林眞須美宅の台所、シンク下収納からヒ素が発見され、証拠として押収されているが、これは事件発生から2ヵ月後、警察による家宅捜索の4日目に見つかったものである。
最も重要視されている近隣住民の目撃証言に至っては、林眞須美の「怪しい様子」を「自宅1階のリビング」から見たという証言が、途中から「2階寝室」へと変わったばかりか、黒いTシャツを着ていた林眞須美について、「白いTシャツ」を着ていたとしている。
現場が誰でも出入りできるガレージであったため、犯行が林眞須美によるものと断定することは非常に難しい(それでも断定されたわけだが)。極端な話、ある日突然、林眞須美とは別の真犯人が名乗り出てくる可能性も否定できない。
「無実」かどうかは林眞須美本人にしかわからないが、法律に則るならば、この状況では「無罪」であろう。
さて、前回の『リーガルハイ』の見せ場は、最高裁法廷での古美門と醍醐検事(松平健)との対決。
古美門の主張は、そのまま和歌山カレー事件に当てはまらないだろうか。
「人は見たいように見、聞きたいように聞き、信じたいように信じる。検察だってそうでしょう。証拠によってではなく、民意に応えて起訴したんです。(略)たしかに安藤貴和は社会を蝕む恐るべき害虫です。駆除しなければなりません。(略)死刑にしましょう。現場での目撃証言はあやふやだけれど、死刑にしましょう。被告人の部屋から押収された毒物が犯行に使われたものかどうか確たる証拠はないけれど、死刑にしましょう。(略)証拠も証言も関係ない。高級外車を乗り回し、ブランドの服に身を包み、フカヒレやフォアグラを食べていたのだから死刑にしましょう。(略)民意などどいうものによって人一人を死刑にしようというのなら、すればいい。所詮、この一連の裁判の正体は、嫌われ者を吊るそうという国民的イベントにすぎないんですから」
(以下は、カレー事件とは関係ない)
閉廷後、古美門は、貴和を死刑にすべしという団体に襲われ、瀕死の重傷を負って入院中の弁護士黛真知子(新垣結衣)のもとへ駆けつける。しかし時すでに遅く、黛の顔には白い布が掛けられていた。古美門の表情はもはや半沢直樹。
観ているこちらは、「えーっ、『リーガルハイ』ってそういう(シリアスな)ドラマじゃないでしょ! もしこれが嘘なら不謹慎すぎる!」と思っていたら、やはり黛は亡くなっておらず、元気にしていた。しかしそこは脚本古沢良太、すかさず登場人物に「不謹慎にもほどがあるだろー!!」と叫ばせていたので、私は収まった。
その後、堺雅人の早口についていけなかったのか、新垣結衣が「PTSD」を「PKSD」と言い間違えたのを聞き逃さなかったぞ(あれはわざとか?)。
(文中、敬称略)