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2011-11-04

『おひさま』と『カーネーション』

一つ前のNHK連続テレビ小説『おひさま』と、現在放送中の『カーネーション』

まだ始まったばかりだが、私には「カーネーション」のほうが面白い。

『おひさま』が今ひとつだった理由をいくつか――。

主人公陽子(井上真央)の親友、育子(満島ひかり)は、ことあるごとに「女性たちよ!よき人生を!」と叫ぶフェミニスト。

その言動は、女学校時代から一貫している。

しかし、なぜ育子がそういう思想を持つに至ったかについては、説明不足。

書店の娘で、「雑誌から仕入れる情報が豊富な発展家」(NHK HP)とあるので、雑誌の影響ということか。

陽子のもう1人の親友、真知子(マイコ)は、両親も登場、自宅のシーンもたびたびあったが、育子については自宅(書店)のシーンはなく、親は東京の大学への進学を反対していると語られるのみ。

育子が東京大空襲で負傷したときも、松本から駆けつけたのは、身内ではなく陽子。

いずれにしても、育子のようなステレオタイプなフェミニストを登場させる意図がわからなかった。

主人公の陽子は、師範学校を卒業して小学校の教師となり、松本の蕎麦屋「丸庵」の一人息子、和成(高良健吾)と結婚。

出産後も教師を続け、授乳のため、和成が赤ん坊を背負って松本から安曇野の小学校へ通う。

(このドラマでは、松本・安曇野間の移動シーンがないため、距離感がわかりづらい)

ここで強調される和成のイクメンぶり。

少子化対策という今日的価値観の投影か?

仕事と育児が両立できそうな恵まれた環境にも関わらず、陽子はあっさりと(少なくとも私にはそう見えた)教師を辞めてしまう。

この辺から、ドラマのテーマや、陽子のパーソナリティーがわからなくなってきた。

ドラマ後半、松本の商業地にある陽子の婚家「丸庵」が火事で焼失。

一家は、「丸庵」の再建はせず、安曇野の古い家を蕎麦屋に改装し、移り住む。

観光地化もされていない森の中の蕎麦屋に、いったいどこから客が?という私の心配をよそに、客は順調にやってくるのである。

もしかして、これはファンタジーなのか?と思い始めた。

そういえば、現代の陽子(若尾文子)のシーンは、やたらと紗がかかっている。

陽子はすでに亡くなっていて、陽子の話の聞き役の房子(斉藤由は、そうとは知らずに幽霊と話をしているという設定か?と思ったら、そうではなかった。

9月から始まった『カーネーション』は、登場人物たちに今日的価値観が投影されておらず、例えば、主人公の父親(小林薫)は、どうしようもなく、家父長的である。

だから、面白い。

残念なのは(実話だから仕方ないが)、「おひさま」同様、主人公の母親の実家が、大金持ちであることだ。

どれだけ困窮しても、いざとなれば助けてくれる後ろ盾があるので、見ているこちらが緊張感を持てない。

庶民の僻みか。

(文中、敬称略)

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