それでも面白いのが『あまちゃん』
前回のブログタイトル。
「じぇじぇ」を「女性手帳」という不愉快なテーマに使いたくなかったのだが、たまたま引用した朝日新聞の記事の裏面が、「じぇじぇじぇ 朝ドラ『あまちゃん』が好調」という記事だったので、つい使ってしまった。
野中宗助さんが、ブログでこの記事に触れておられるが、私もこの記事の「もともと宮藤作品は悪役がいないし、井戸端会議的な会話劇が多い。人を傷つけない作品なんです」という見解に違和感を覚えた。
何によって傷つくかは、人によって異なる。自分が傷ついていないから、他人も傷ついていないとは限らない。
アキ(能年玲奈)に露骨にふられたヒロシ(小池徹平)、春子(小泉今日子)からほとんど一方的に離縁された正宗(尾美としのり)、そして最近、こっ酷い失恋を経験したアキ。彼らに自分を重ねて「傷ついている」視聴者もいるかもしれない。
ちなみに私は、アイドルおたくヒビキ一郎(村杉蝉之介)が、アキに対して発する「ブス」という言葉が気になる。
「ブス」という言葉は、いかようにもしがたい容姿について、しかも女性に対してのみ使われるという点で、「オバサン」という言葉と似ている。
「オバサン」は、いかようにもしがたい年齢を材料に、「年齢を気にしている」女性を傷つけることができる暴力的な言葉である(「おばさん」にもいろいろあり、私は悪意が込められた「おばさん」をカタカナで「オバサン」と表記している)。
春子に比べて「ブス」であるという設定だった「あんべちゃん」(片桐はいり)の扱いもひどいなと思っていたが、あんべちゃんが北三陸を去るとき、春子に「嫌いでした」「許せませんでした」と思いの丈をぶちまけ、ただの「ブス」の脇役ではないということを示したので、なんとなく納得。
さらに、アキにふられたヒロシは、観光協会の「栗原ちゃん」(安藤玉恵)と急接近、そしてアキ失恋の報に、大喜び。ふられっぱなしではないのだ(「栗原ちゃん」はふられたことになるのだろうか)。おそらく、正宗にも今後、よいことがあると思わせる。
クドカンの脚本は、片思いや失恋の描き方にデリカシーがないわけではなく、恋愛を深刻化しないだけなのだ。ヒロシやアキの失恋は、傍から見ていると滑稽で、逆説的に、恋愛に悩む人たちを救ってくれるのではないだろうか。
同じくNHKで放送された『はつ恋』、現在放送中の『第二楽章』がつまらなくてたまらない私にとっては、『あまちゃん』で描かれる恋愛観は、とても好ましい。
「ブス」は気になるし、「人を傷つけない作品」とも思えないが、それでも面白いのが『あまちゃん』なのだ。
朝ドラと大河ドラマが、ともに面白いという僥倖に恵まれた。
この幸せがずっと続いてほしい……。
(文中、敬称略)