『痛快!ビッグダディ 完結編』
美奈子さんとの再婚以来、私の中で暴落し続けていたビッグダディ株。
『ビッグダディの流儀』と『ハダカの美奈子』を読み、ますます美奈子さん贔屓になっていたのだが、不思議と美奈子さん不在の「完結編」に物足りなさを感じなかった。
むしろ、美奈子さんがいないことで、生々しさやジメジメ感が払拭され、カラッと終わることに成功していた。これには意外にも、「元祖元妻」佳美さんの存在が貢献していた。
1歳から8歳までの8人の子どもを残して別の男のもとへ走り、三つ子を産んで戻ってきて嫌がるビッグダディに復縁を迫り、12人目を産むことで強引に妻の座を取り戻した佳美さん。
子どもは産んでも育てない彼女を軽蔑していたはずなのに、今回は、特殊な能力を秘めた人ではないかと尊敬の念さえ覚えた(今日的には12人産んだだけでもかなり特殊だが)。
ジェスチャーしりとりで、その場にいた家族全員と全国の視聴者が「ゴルフ」と明解したビッグダディのジェスチャーをひとり「素振り」と解釈し、「りんご」のジェスチャーをして見せた佳美さん(りんごのジェスチャーって…)。
ビッグダディが完璧に記憶していた子どもたち一人一人が生まれた病院の名前をほとんど記憶していなかった佳美さん。
最初の結婚生活で、まったく料理をしなかったどころか、一度も台所に入ったことがなかったこと、洗濯も一度もしなかったことをビッグダディから指摘され、「洗濯はしていた」と応えたものの、「どこに干した?」と聞かれ、「外」としか応えられなかった佳美さん。
働き始めた神奈川県戸塚のラーメン店に突然訪ねてきたビッグダディに、「ブログ昨日見て、大船渡だからもしやと思ったんだよね」と語り、「大船渡って岩手だよ」と返された佳美さん。神奈川の大船と勘違いしたのだが、震災を経てまだ大船渡を知らなかったとは。
こういう佳美さんの天然ぶりが、今回は随所に利いていた。
ビッグダディと佳美さんは、3回も結婚しただけあって(そして3回離婚)、じつは相性がいいに違いない。佳美さんがボケまくってるとき、ビッグダディは本当に楽しそうだった。
『痛快!ビッグダディ』は、大家族モノとして、金字塔を打ちたてたと思う。あらゆる点で、他の大家族モノに大きく水をあけた。
もう2度とこんなによい素材(ビッグダディと子どもたち)は出てこないだろう。
ところで、キャンプ場で化粧中の佳美さんにビッグダディが「化粧直してんの?ケンジが(放送を)観るかもしれないもんね」と話しかけるシーンがあった。
わざわざ放送しながらも、「ケンジ」の文字はテロップになかった。
この思わせぶりなシーンはなんだろう。
ケンジというのは佳美さんの恋人だろうか。
新たに佳美さんのシリーズを制作するための伏線だろうか?
ビッグダディこと林下清志さん、いろいろなこと(料理、タオルの巻き方から子育てまで)を教えてくれてありがとうございました。
これからもお元気でご活躍ください。
みなさま、よいお年を。